映画:モアナと伝説の海

お勧め!

 

以下、ネタバレ注意!

 

オープニングは、創世の神話から。

初めに海があった。海から女神テ・フィティが生まれ、その心から島と植物と動物が生まれた。大きな力を持つ女神の心は邪悪な存在達に狙われ、「神々の釣り針」の力で自在に姿を変えることが出来る半神マウイが心を盗み出した。しかし、マウイは溶岩の魔物に阻まれ、女神の心と神々の釣り針は海の底深くに失われてしまった。女神の心を失った世界は、いつか全てが闇に覆われてしまう。けれど、海に選ばれた者が珊瑚礁を越えて心を女神の元へ返せば、世界から闇は消える…。

場面は転換して、珊瑚礁に囲まれた平和な島モトゥヌイへ。語り部の老女が語る恐ろしい伝説に子供達は怯える。しかし、ただひとり、心を弾ませる少女がいた。その少女の名はモナア。

 

とにかく、海と空の映像が美しい。まるで実写かと思うくらい。そして、登場人物が魅力的。

まず、主人公のモアナ。幼い頃に海に選ばれた女の子。海から女神の心を託されたが、あまりにも幼いために忘れてしまう。海に憧れながらも、島の後継ぎとして頑張ろうとしていた普通の女の子。

珊瑚礁を越えて外海に出ても、海に選ばれたことに半信半疑の上、元々自分に自信がないので、最初は「モトゥヌイのモアナ」と名乗りをあげることもままならない。そんなモアナが様々な経験を重ねて成長をしていく過程が上手く描かれています。

 

旅の道連れ、マウイ。半神半人の「元」英雄。人々のために釣り針で島を持ち上げ、様々な作物を作り出した。女神の心を盗み出した際に力の元である神々の釣り針を失い、無人島に幽閉されてしまった。

心を返しに行くモアナと出逢い、渋々ながら旅を共にする。最初は鼻持ちならない自惚れ屋だが、彼もこの旅を通して成長を遂げる。

 

そして、モアナの祖母、タラ。彼女なくしてはこの映画は語れない。島の語り部であり、モアナを珊瑚礁の外へと導く存在。

島の植物が病み、珊瑚礁の海では魚が獲れなくなってしまっても、頑なに珊瑚礁の外に出ることを禁じるモナアの父。

島の長でもある彼は、タラの息子であるが、若い頃に好奇心に駆られ、親友と共に珊瑚礁の外に船出したが、運悪く遭難して親友を死なせてしまった過去に囚われてしまっている。そんな息子を責めるでもなく諭すでもなく、孫娘のモナアに「お前の思うとおり、珊瑚礁を越えて外の海にお行き」と言い続ける。島の洞窟に隠された大きな船の存在をモナアに教え、モナアは自分達の祖先が希望を胸に抱いて広い海を渡ってこの島に辿り着いたことを知る。

そして、タラはモアナが海に選ばれたことを告げ、預かっていた女神の心(緑色に光る石)をモアナに渡す。

そんなタラが病み倒れ、最後の力を振り絞ってモナアに告げる。「お行き」と。

の言葉に突き動かされたモナアは、洞窟に隠された祖先達の船に飛び乗り、珊瑚礁を越えていく。

夜の暗い海をモナアの乗る船が進む。その背後で、祖母がいる館の灯りが一斉に消えた。

…ああ、タラが逝った。

直接的なシーンがなくとも、モアナが愛しモナアを愛した祖母の命が失われたことがわかった。そして、館から光が生まれてモアナの乗る船を追いかけてくる。光は海の中を突き進み、みるみるうちに形を変えて大きなエイになり、モアナを導いていく。

「ご先祖様はエイになって逢いに来てくれるんだよ」かつて、海を泳ぐエイと戯れながら幼いモアナに語ったタラ。「だから、あたしはエイを背中に彫ってもらったんだよ」

タラの背中には、エイを象った美しいタトゥーが彫られていた。

もしかしたら、タラは自分が海に選ばれたかったのではないのだろうか?

 

タトゥーも、この映画の大きな要素だ。歴史的な経緯のために日本では「刺青」が忌避されているが、外国では一族の誇りを示す大切なシンボルになるそうです。

マウイの身体一面にもタトゥーが彫られていて、彼の歴史を語っている。そのタトゥーの中には、ちっちゃな「マウイ」が棲んでいて、本体のマウイを批判したりモアナを応援したりと大忙し。マウイ自身もちっちゃな自分と会話を交わしてミニコントを演じたりする。このタトゥーは、もうひとりのマウイなんだろう。

 

そして、海。意思を持った海の水が、度々モアナの手助けをする(でも、肝心なときには頼りにならないが)

生きた水の表現が素晴らしい。

 

あとは、ディズニーのアニメーションでお馴染みのマスコット。ニワトリのヘイヘイ。うん、ヘイヘイ…ヘイヘイだね。

 

最後に。映画はエンドロールの最後まで座っていましょう。最後にクスッと笑えるオマケのシーンがあります。