溺れる!

帰り道の途中、遠くで雷が鳴った。

西の空は、薄黄色の雲がのっぺりと壁の様に拡がっている。

東の空は、真っ黒な雨雲の群れ。

 普通ならば、雷鳴は東の空からするのだろうけれど、雷鳴は西の空からする。

変な空だ。

強い風が吹き付けて来て、細かい砂が顔を打つ。何で、砂が?と思いつつ、出来るだけ速くチャリを漕ぐ。雨が降る前に帰らなければ。

でも、間に合わなかった。雨の一滴が落ちてきたと思ったら、バラバラと音を立てて雨が降ってきた。

街路樹の下で雨宿りをしたけれど、雨がどんどん強くなる。仕方がないので、屋根のある処で雨宿りしようと自転車を押して歩き始める。風が強くなる一方で、なかなか前に進めない。雨もどんどん強くなる。

そして、止めとばかりに「超ド級」と言っても良いくらいの、どしゃ降りに襲われた。

まるでホースの先を指で押さえて勢いを増した様な「水の束」が身体全体に叩きつけてくる。あっという間に全身がズブ濡れになった。

雨の量と風の勢いが強すぎて、息が出来ない。

溺れそう。本当にそう思った。

雨に打たれて命の危機を感じるなんて、信じられない。喘ぐように息をしながら数メートルを進み、マンションの屋根のある自転車置き場に避難することが出来た。

雨がどんどん降ってくる。雨樋が間に合わなくて、自転車置き場の屋根から滝の様に水が流れる

このまま雨が止まなかったらどうしよう。

不安で一杯になったけれど、五分程で雨足が小さくなった。

今のうちにと自転車に跨がり、速攻で家路についた。

 

ひとつの教訓。

 

雷鳴を伴った空一面ののっぺりとした雲には注意。